泌尿器科を受診される方へ

泌尿器科のイメージ写真

泌尿器科は、腎臓や尿管、膀胱など、尿の産生から排尿に関連する臓器に生じる病気を主に扱う診療科です。さらには、前立腺など男性生殖器も診療範囲に含まれます。
対象とする臓器の形態が男性と女性では大きく異なるため、前立腺肥大のように男性のみの疾患もあれば、膀胱炎など女性に多く見られる疾患もあるのが特徴です。

泌尿器科で行う主な検査

当院では、泌尿器に起こる痛みやトラブルの原因を明確にした上で適切な治療ができるよう、症状に応じて以下のような検査を行っています。

尿検査

排尿のトラブルの原因をさぐるために必須の検査です。
より正確な結果をしるために、排尿の取り方にも注意をはらっております。
男性では症状に応じて尿の取り方をかえております。
男性の排尿時の痛みや性病が疑われる場合は初期尿(出始めの尿)を採取し、それ以外では中間尿(最初のおしっこは捨てて中間の尿だけを採取)を採取おねがいしています。
女性では外陰部のよごれが尿に混じることがあり、それを避けるために排尿前に陰部の清拭をお願いし、中間尿の採取をお願いしております。

尿流量検査、残尿測定

検査トイレで排尿していただくことで、尿の勢いや、排尿にかかる時間、排尿量がわかります。
また排尿後に超音波で残尿量を測定します。
この二つの検査で膀胱機能を評価します。

超音波検査

腎臓や膀胱、前立腺の形態的異常の有無を精査するに必須の検査です。
血尿の原因となる結石や悪性腫瘍の有無も確認することが可能です。

膀胱鏡検査

血尿などを主訴に来院されるかたで、膀胱内の腫瘍や結石、尿道口の異常などが疑われるときは、外尿道口から内視鏡を挿入し、膀胱鏡検査を行います。
これにより、膀胱内の粘膜異常などを確認することが出来ますので、膀胱がんの早期発見などにも役立ちます。
当院では軟性膀胱鏡を使用しており、極力患者様の負担がないように努めています。

泌尿器科でみられる主な疾患

頻尿について

頻繁に尿意をもよおしてしまう疾患です。
起床してから就寝までの間に8回以上もトイレに行く「昼間頻尿」と、就寝後から起床までに1回以上トイレに行く「夜間頻尿」があります。
但し、その日の気候条件や食事・飲食の内容によっても尿意は変わってきますし、もともと個人差もあります。
従って、昼間に8回以下であっても、ご自身で排尿回数が多いと感じられている場合は、頻尿といえます。

夜間頻尿について

夜間、排尿のために1回以上起きなければならないという訴えをいいます。加齢とともに増加し、生活の質(QOL)の低下に強く関与しています。
夜間頻尿の原因は、

  1. 多尿(24時間の尿量増加)、夜間多尿(夜間のみの尿量増加)
  2. 膀胱蓄尿障害(膀胱の容量減少)
  3. 睡眠障害

に大別され、これらが複合的に併発することもありますので、3つのタイプを識別しながら治療を行います。

頻尿の原因

過活動膀胱

膀胱に尿があまり溜まっていないのに、膀胱が勝手に収縮してしまうタイプです。頻繁に尿意が生じ、トイレに何回も行くようになります。
日本では非常に多く見られる病気であり、一説によると800万人以上が罹患していると言われています。
前立腺肥大症、脳卒中などの脳血管性疾患、加齢などが引き金となることもあります。
こうした症状は日常生活やお仕事に支障を生じますし、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大幅に低下させます。
治療で症状を軽減できますので、「歳だから」とあきらめてしまわずご相談にいらしてください。

残尿過多

排尿した後も膀胱内に尿が残っているタイプです。
前立腺肥大症による尿路閉塞、腰部椎間板ヘルニアによる膀胱の神経障害などによって膀胱から尿を排出しづらくなり、常に膀胱に尿がたまっているので頻尿になります。
進行すると、腎臓まで尿がたまり腎不全を引き起こします。

多尿

尿量が異常に増加しているタイプです。
健康成人の一日の尿量は、おおむね800〜1,600mlです。多尿は一般的には、一日3,000ml以上に尿量が増加した状態をいいます。
水分の多量摂取、利尿剤の使用、糖尿病や腎機能障害などによって起こります。

尿路感染症

膀胱炎や前立腺炎により膀胱が刺激され頻尿になります。

腫瘍性

膀胱がんが進行すると、膀胱の容積が小さくなり頻尿になります。

心因性

神経質な方や、小児、あるいは仕事や病気への不安や緊張による心因性の頻尿も多くみられます。

頻尿の治療について

水分の摂りすぎが原因ならば、水分を適切に管理することで改善できます。
水分量が適正なのに頻尿となっている場合は、主に薬物療法を行います。膀胱の収縮を抑制する抗コリン薬やβ3受容体作動薬などを主に使用します。
有効な薬剤がいくつも登場してきていますので、効果と副作用などの出方をみながら、ライフスタイルや症状に合わせて処方していきます。

尿漏れについて

自分の意思に反し、トイレ以外の場所で尿が漏れてしまう疾患です。
医療機関を受診せず、一人で悩まれている方も多いようですが、尿漏れ症状は非常に多く、女性高齢者の約30%、男性高齢者の約15%が罹患していると言われています。

尿漏れのタイプ

切迫性尿失禁

尿意が突然高まり、切迫して我慢できずに尿が漏れるタイプです。
夜間に尿意を感じて目を覚ます夜間頻尿もよく見られます。
大脳の排泄中枢の障害などによって起こると言われています。

腹圧性尿失禁

咳やくしゃみをしたり、重いものを持ち上げたりするときに、腹腔内の圧力が急激に強まり、尿漏れを引き起こすタイプです。
原因は経膣分娩での出産、年齢、肥満などで骨盤底筋という内臓を体の下から支える筋肉が弱くなることで起こります。

溢流性尿失禁

膀胱にどんどんと尿が溜まっていくことにより、膀胱内の許容量を超えてしまい、少しずつ尿が漏れ出してしまうタイプです。

機能性尿失禁

尿路系以外の身体精神障害によって引き起こされるタイプです。
認知機能の問題、例えばアルツハイマー型認知症により、尿意を自覚できなくなったり、トイレの場所が分からなくなるケースが代表的です。

尿漏れの治療について

まず、水分を摂取するタイミングを見直します。
原則として就寝前や外出前は摂取を控えますが、尿が濃縮されると膀胱を刺激することになるため、適度の水分は摂取します。

排尿の時間も規則正しく行うようにします。それぞれの患者さんの生活リズムなどを考慮し、尿意を上手くコントロールできるようにするのです。

腹圧性尿失禁に対しては、骨盤底筋のトレーニング(骨盤底筋体操)が有効です。
効果が現れるまでに時間はかかりますが、継続することが重要です。膣や肛門を意識してゆっくり締め、5秒保ってからゆるめる動作を1日に何度も行います。

薬物治療としては、括約筋の作用を強めるβ2刺激薬や過活動膀胱で使用する抗コリン薬を用います。
これらの薬物療法でも効果が不十分な場合には専門施設での手術治療を検討します。

過活動膀胱について

膀胱が必要以上に過敏に活動することで、頻尿が起こる病気です。
水仕事を行おうとしたとき、水の音を聞いただけでもトイレに行きたくなる、帰宅して玄関のドアノブを握ったとたんにトイレに行きたくなくなどの症状があります。
いずれも、切迫感を伴い、時に間に合わず漏らしてしまうこともあります。

日本国内で40歳以上を対象とした調査では、12.4%で過活動膀胱症状がみられ、加齢とともにその比率は増加しています。
治療は薬物療法、行動療法(体重減少や適量飲水指導、膀胱訓練など)、骨盤底筋訓練などの理学療法があります。
薬では、膀胱の異常な収縮を抑える抗コリン薬や、膀胱の筋肉を緩める働きのあるβ3作動薬が代表的です。
難治性の過活動膀胱に両薬剤を併用投与する場合もあります。
いずれも薬の飲み合わせや副作用などを確認しながら、個々人に合わせた使い分けを行います。

前立腺肥大症について

男性に特有の「前立腺」という生殖器があります。これは、膀胱の下にある栗の実ぐらいの大きさの臓器で、前立腺液を分泌します。
前立腺液は精液の一部となり、精子を保護したり、精子に栄養を与えたりし、その運動機能を助けているのです。
前立腺肥大症は、この臓器が肥大化し、排尿トラブルを引き起こす疾患です。

加齢とともに罹患率は増加しており、50歳で約30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%の方に前立腺の肥大状況が見られますが、その全てで治療が必要となるわけではありませんが、気になる方はまずは当院にご相談ください。

尿路結石症について

尿が腎臓で作られ、これが体外に排出される道筋でできた結石を総称して「尿路結石」と呼びます。尿中のシュウ酸などがカルシウムと結合して結石となります。
結石が存在する場所によって腎結石(腎臓の内部に結石がとどまっている状態)、尿管結石(腎臓と膀胱をつなぐ管にある結石)、膀胱結石、尿道結石(膀胱から体外に尿を排出する管にある結石)と呼ばれます。

腎臓で結石が作られ、これが内部にとどまっている段階では痛みがないことも多いです。
しかし、この結石が尿管まで流れ落ちた際には激痛が伴い、緊急手術が行われることもあります。
目立った痛みが無い場合は、薬物を投与して経過観察します。
しかし、徐々に結石が大きくなっていき、尿管などを詰まらせるおそれがあるときは、体の外から衝撃波を照射して結石を砕いたり、尿道から細い内視鏡を挿入して結石を破壊したりして治療します。

男性更年期障害について

男性ホルモンの減少に伴い、気力の低下や、精力の低下、強い疲労感、体調不良、筋力低下、不眠などの症状を発症させます。早いひとでは40代から発症します。
男性ホルモンには、筋肉を成長させる、ドーパミンを分泌し意欲を起こさせる、血管に有害な不純物が蓄積されるのを防ぐ(メタボ予防になる)、性欲を保たせる、加齢による衰えを防ぐ、記憶力や集中力を向上させる機能があります。
男性らしさや健康を保つのに、男性ホルモンはとても重要な働きをしています。
加齢やストレスに伴い、男性ホルモンが減少することによって発症するのが男性更年期障害です。
受診では、質問票で症状をスコア化し、ホルモン値の異常の有無を検査します。

前立腺がんについて

前立腺に発症するがんで、男性特有のがんです。
前立腺がんの患者さんは年々増加していて、現在男性でかかるがんでは、2番目に多いです。
前立腺がんは高齢者に多く発症するため、人口における高齢者の占める割合が高くなるほど前立腺がんの患者さんも増加します。
また、血液中の前立腺特異抗原(PSA)の値を調べるPSA検診が普及したことも要因のひとつであると考えられます。

前立腺がんは主に外線(辺縁領域)に発生します。
他の臓器のがんとは異なり、ゆっくりと進行するため、早期に発見できれば完治が可能ながんです。
しかし、初期には自覚症状がほとんどないため、発見が遅れることがあります。進行すると骨や臓器に転移することがあります。
治療は、手術、放射線、ホルモン療法などがあげられます。
がんの進行具合や悪性度によって治療の選択が異なります。早期発見のためにも50歳を過ぎたらPSA採血を1年に1回は受けるようにしましょう。

膀胱がんについて

膀胱内の粘膜下層や、その下の筋層に発生するがんです。
尿路(腎、尿管、膀胱、尿道)のがんの中では最も頻度が高く、特に60~70歳代の男性で多く見られます。
初期の段階では、痛みなどを伴わない血尿が出るケースが多いです。この他、膀胱への刺激が増え、頻尿や排尿痛などの症状も見られます。
膀胱炎と間違えられて発見が遅れる場合があります。
進行すると、水腎症や排尿痛、排尿困難などの症状が強まります。

治療に関しては、進行度を踏まえて手術、化学療法、放射線療法などを選択します。
がん組織が粘膜表面に留まっているときは、尿道から膀胱鏡を挿入して腫瘍部を電気メスで切除する経尿道的膀胱腫瘍切除術を行います。
がんが筋層にまで達しているときは、膀胱全摘除術が中心となります。
なお、合併症のリスクなどによって手術が難しいケースでは、放射線治療が選択されます。

泌尿器科を受診される女性の方へ

泌尿器の病気には、前立腺肥大にように男性特有のものもあれば、膀胱炎のように女性に多く見られる疾患もあります。
当院では、男女の性差を踏まえ、女性により適した形で検査や治療を行っております。
本来、体調が優れず、病気の兆候が見られた際には、早めに医療機関を受診し、必要な治療を早期に行うことが大原則です。
しかし、泌尿器の疾患の場合、恥ずかしくて受診を躊躇し、病状がかなり進行してから来院してしまうケースも少なからず見られ、この傾向は特に女性で強いとされています。

当院では、女性のQOL(生活の質)の向上を目指し、少しでも抵抗なく受診していただけるよう配慮しておりますので、排尿の問題や骨盤臓器脱など、泌尿器の悩みをお持ちの方は、お一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

膀胱炎について

女性に多く見られる疾患で、臨床経過により急性と慢性に、発症にかかわる基礎疾患(排尿障害、糖尿病、膀胱結石、膀胱がんなど)がある複雑性と無い単純性に分類されます。
通常単純性の場合は急性、複雑性では慢性の臨床経過をたどります。
膀胱炎では、原則として発熱を伴いません。
また、細菌が原因とならない間質性膀胱炎があります。

膀胱炎予防のための生活指導について

膀胱炎は「菌の侵入」「菌の増殖」によって生じます。
便秘・下痢・月経・性交などの陰部の菌が増える状況では、陰部を清潔に保ちましょう。性交後に排尿をすることが推奨されています。
但し、日常生活での過剰な洗浄や排尿後のビデの使用はかえって膣環境を悪化させ、細菌を増やす原因となりますので控えてください。
「侵入した菌を外に出す」ためには、水分をこまめにとり、排尿をする必要があります。
しかし、過剰な飲水や排尿は、心因性の頻尿を引き起こすこともあります。
膀胱炎になった際には、飲水量を増やすことで尿量を増やして菌を尿で洗い流し、改善したら通常の排尿生活に戻りましょう。

また、抵抗力をつけることが重要です。寝不足、過労、ストレスを避けるようにしましょう。
忙しい時ほど抵抗力が下がり、また飲水量がへる傾向にあり「菌の増殖」を引き起こします。疲れていると思ったら、飲水することを思い出すようにしましょう。

骨盤臓器脱(子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤)について

女性の子宮や膀胱、直腸など、骨盤内にある臓器は多くの筋肉・靭帯・膜で支えられています。
しかし、出産や女性ホルモンの減少によって筋力が低下してくると、各々の臓器が本来の位置から外れていき、下に垂れ下がってきます。
こうした状態を総称し、「骨盤臓器脱」と呼んでいます。
肥満、慢性の便秘、咳嗽、重量物の運搬(介護や孫の世話)が悪化要因になります。
中高年の女性を中心として、臓器脱で悩んでいる方は非常に多く、全国で数百万人はいると推計されていますが、羞恥心を感じられ、不快な症状を我慢している女性が多いのが現状です。

保存的治療について

便秘の解消や体重減量、重いものを持たないなど悪化要因の改善が第一です。
また、即効性が期待できるペッサリー療法(当院ではペッサリーの自己着脱を推奨しております)や矯正下着類の着用、および長期的に症状改善を目指す理学療法である骨盤底筋訓練があります。
それぞれの状態や生活習慣にあった治療を選択可能です。

手術療法について

脱出した臓器を解剖学的に正常な位置に戻すことが目的で、根治的治療として非常に効果的です。
手術方法としては、メッシュを使用する手術と、メッシュ使用しないで修復を行う手術があります。
再発、性機能温存、年齢、全身状態などを考慮して手術が選択肢となる場合には、ご希望に沿って適切な医療機関をご紹介いたします。